2020年07月

皆さん、こんにちは!

今回は前回に引き続き、国際秩序の変動をエントロピー増大の法則の観点から見ていきたいと思います。
前回は、国際秩序とは何か、国際秩序と覇権国家との関係、歴史的な覇権国家の変更とそれに伴う国際秩序の変更、アメリカ中心の国際秩序に対する中国の挑戦、といったことを書きました。

この記事を書いているさなかにも、米中間で領事館の閉鎖合戦が起こり、いよいよもって両国の対立が新たな局面を迎えようとしています。事態の鎮静化を祈りつつ、この記事はちょっとタイムリーだななんて思っています。

今回は、いよいよエントロピー増大の法則の観点から国際秩序の変更を考えたいと思います。

内容としては、以下のような感じです。
(1)エントロピー増大の法則とは
(2)国際秩序の変動とエントロピー増大の法則
(3)米中関係に見る、アメリカ中心の秩序のエントロピー増大

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(1)エントロピー増大の法則とは

 エントロピーは、ドイツの理論物理学者であるクラウジウスが1865年に熱力学で導入した概念です。「エネルギー」のenと「変化」を意味するギリシャ語tropyから命名されました。今日では、エントロピーの概念は物理学の分野にとどまらず、情報理論や経済学、社会科学など幅広い分野で応用されています。
 
 そんなわけで、今回は国際関係論に応用しようというわけです!!

 エントロピーという概念は、「無秩序な状態の度合い」を数値で表すもので、無秩序な状態ほどエントロピーは高く、秩序の保たれている状態ほどエントロピーは低くなります。

 エントロピー増大の法則とは、「全ての事物は、それを自然のままにしておくと、そのエントロピーは常に増大し続け、外部から故意に仕事を加えてやらない限り、そのエントロピーを減らすことはできない。」というものになります(私は物理学を専攻したことがないので厳密性に欠けているかもしれませんが大枠はこのような理解で間違いないと思います)。

 このエントロピー増大の法則ですが、分子生物学者の福岡伸一氏が書かれた国語の教科書の一文でお見受けしたのが知ったきっかけです。同氏は、この法則を生物の恒常性の維持の前提として挙げています(確か福岡伸一「生物と無生物のあいだ」だった気がします)。(非常に面白い文章なので是非ご一読ください。)

 エントロピー増大の法則とは、ざっくりいえば、維持しようとしない限り、あらゆるものはその秩序を喪失していく、ということを意味します。
 
(2)国際秩序の変動とエントロピー増大の法則 
 さあ、それではいよいよエントロピー増大の法則から国際秩序の変動を考えてみましょう(ようやく本題です)。

 先ほど書いたように、エントロピー増大の法則はまさに「秩序」に関する法則であり、それは同じ秩序である国際秩序にも適用できるはずだと考えました。
 
 前回、国際秩序は時の覇権国家を中心とした秩序であり、歴史的に変容してきたと書きました。こうした国際秩序の変動そのものも、エントロピー増大の法則を当てはめて考えることができると思います。

 つまり、「ある国際秩序も外的な力でそれを維持しようとしない限り、徐々に崩壊していく」と言えます。このことは、前回紹介した歴史的な展開からも明らかだと思います。
 
 国際秩序も、覇権国家を中心にその秩序の存続に利益を見出す諸国の努力なくしては維持することができません。例えば、第一次世界大戦後の国際秩序は、ヨーロッパにおいてはフランス、イギリスなどの戦勝国を中心とするヴェルサイユ体制でした。太平洋には、同じく戦勝国を中心としつつ、台頭しつつある日本を牽制するワシントン体制という国際秩序が存在しました。

 両秩序は、世界恐慌に伴うファシズムの台頭を受け、日本やドイツ、イタリアの挑戦を受けます。そして、その挑戦を抑え込むことができず第二次世界大戦という秩序の崩壊を招きます。第二次世界大戦終結後、崩壊したこれらの秩序は、アメリカを中心とする資本主義陣営とソ連を中心とする共産陣営による二極構造という新たな国際秩序に再編されました。

 現在私たちが生きているアメリカ中心の秩序というのは、日本を含めた先進資本主義国かつ民主主義国が中心の国際秩序であると言えます。ただし、こうした既存の秩序も、エントロピー増大の法則に照らせば不変ではありません。

(3)米中関係に見る、アメリカ中心の秩序のエントロピー増大
 今まで無数の国際秩序が崩壊してきたように、現在の国際秩序もまた、緩やかに崩壊に向かっているといえます。しかし、アメリカも当然黙ってこれを見過ごすはずがありません。これまでも、覇権国家は自身を中心とする国際秩序を維持するために様々な手段を尽くしてきました。それは国家間の同盟関係や国際秩序を維持する国際法、国際秩序を乱す国家への集団的な制裁です。
 
 こうした覇権国家が国際秩序を維持するために尽くす様々な手段こそが、エントロピー増大の法則がいうところの「外側から故意に仕事を加えてやる」ということになります。

 前回は、中国がアメリカを中心とする既存の国際秩序に挑戦していると書きました。具体的には、民主主義や自由といった西側先進諸国の意価値観を拒絶し、一帯一路戦略で独自の経済圏を形成し、南シナ海やアラビア海、西太平洋に進出しています。

 こうした中国の軍事・経済的な膨張に対してアメリカが行っている関税引上げ等の制裁行為も大局的に視れば、アメリカ中心の既存の国際秩序を、それに対する挑戦者である中国から守ろうという意思の表れと理解できます。

 70年代のキッシンジャー(ニクソン大統領の大統領補佐官、国際政治学者で専門はメッテルニヒとウィーン体制)以来のアメリカの外交では、中国も経済成長すれば韓国や台湾のような他の東アジア諸国と同様に民主化し、徐々に西側諸国を中心とする秩序に組み込まれていくだろうと考えていました。これを "engagement policy" といいます。しかし、近年アメリカは正式にこの政策の転換を示し、中国に対して強硬な外交政策をとるに至っています。

 その背景には、いままで中国を懐柔することで自国中心の秩序内に位置づけようとしていた努力が実を結ばず、現状の中国がアメリカが維持したい国際秩序の挑戦者としてみなされるようになったからと理解できます。

 このように解釈すると、アメリカが中国に対して行ってきた(そして現状行っている)諸々の政策は、一貫してアメリカを中心とする既存秩序の維持のための行動とみることができます。つまり、アメリカは自信を中心とする秩序のエントロピーの増大を抑制しようと力を尽くしてきたことになります。
 
 かつてアメリカが「世界の警察」と呼ばれ、世界中に軍隊を展開していたことも、エントロピーの増大を抑制する「外側からの力」と見なすことができます。しかし、2013年にオバマ大統領は「米国は世界の警察ではない」と宣言しました。同年、中国の習近平国家主席が「一帯一路構想」を発表したのも偶然ではないでしょう。

 トランプ大統領は経済的により少ない負担での軍事的なプレゼンスの維持を目指し、日本や韓国などの同盟国にも安全保障上の負担増を求めています。こうしたアメリカの世界的な軍事・安全保障上のプレゼンスの縮小は、アメリカという覇権国家そのものの弱体化という意味以上にアメリカが体現し維持しようとする国際秩序そのものの脆弱化を意味しているとも言えます。

 エントロピー増大の法則を国際秩序に導入することで、国際秩序の変動を、国際秩序の漸進的な崩壊とそれを維持しようとする覇権国家の行為の結果として解釈できると思います。


 以上、つらつらと小難しい文章を書きましたが、個人的には物理学の法則を国際関係論のような社会科学にも応用できる(できてなかったらごめんなさい)ということが面白いなと思いました!!

 このトピックについてはこれで終わりにしようと思います。感想、コメントがあれば送ってもらえると励みになります!最後まで読んでいただきありがとうござました! 東大生ブログランキング

皆さん、こんにちは!

今日は最近作るのにはまっている自家製パンツェッタについて書こうと思います。

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詳しいことは忘れましたが、パンツェッタとは、イタリアの食材で塩漬けにした豚バラ肉のことです。
よくピザとかにのっていますよね。ベーコンとの違いは燻製していないことだと思います。

このパンツェッタ、百貨店とかで買うとそれはもう高い高い。100グラムで1500円とかします。しかし、なんとこのパンツェッタ、お家で簡単に作れます。

新型コロナの外出自粛で生まれた在宅中の暇な時間で作れる凝った料理はないかと考え、ネットで探していると自家製パンツェッタの作り方が出てきたので早速やってみることに。

この自家製パンツェッタ、なんと作成に最短2週間かかります(笑)
でも、材料は豚バラブロックと塩、任意のスパイスのみです。恐らくそんなに料理したことない人でも簡単に作れます。

作り方は、豚バラに塩とスパイスをすり込んで、キッチンペーパーに包んで一週間~10日タッパーに入れて冷蔵庫へ。その後で、流水で無駄な塩とスパイスを洗い流し、水気を切った後でキッチンペーパーに包んで冷蔵庫の中で同じく一週間~10日間乾燥させるだけ。

塩の量とか結構適当でも、いい感じにやれば美味しくできます。この自家製パンツェッタで作るカルボナーラが美味しいことといったら。

最初は生肉だった豚バラブロックが、2週間たつ頃にはカチコチになり、熟成肉の風格が出てきます。それになんだかいい匂い。一回作るとはまります。僕はもう既に3回くらい作ってます(笑)。

簡単なので皆さんもぜひ作ってみてね!

参考にしたレシピ動画;https://www.youtube.com/watch?v=HIE9fvJglWg&t=519s

皆さん、お久しぶりです!

前回からだいぶ間が空いてしまいました。

この間、世界は新型コロナウィルスで大混乱。依然として未知なるウィルスと人類との闘いが続いております。一刻も早いワクチン等の医療技術の開発と経済活動の再開による実体経済への影響の縮減が求めれれていると思います。

さて、今日は金融のお話ではなく、国際関係論コースの学生らしく、国際秩序についてお話したいと思います。あくまで個人の私見なので、悪しからず。

昨年しばしばニュースのなっていた米中間の貿易摩擦問題い代表されるように米中間の対立が表面化しています。今年に入ってからも新型コロナへの対応をめぐってアメリカは中国を名指しで批判したり、中国に対し擁護的なWHOへの拠出金の差し止めを決定してきました。

近年表面化しつつある米中対立は国際関係論上どのようにとらえることができるでしょうか。今回は国際秩序の変遷に対して熱力学の法則であるエントロピー増大の法則を当てはめた分析を行いたいと思います。

長くなりそうなので、とりあえず今回は、以下のようなトピックをお話しします。本題のエントロピー増大の法則との関係については多分次回以降話します。


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                (写真出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57301400X20C20A3000000/

(今回のテーマ)
・国際秩序=覇権国家中心の秩序
・覇権国家の交代の歴史
・中国のアメリカの秩序への挑戦

(1)国際秩序=覇権国家中心の秩序
まず、「国際秩序」とはなんでしょうか。国際秩序とは、「国際社会の構成員の間で、資格基準と行動基準について同意が成立している状態を指す」(国際政治の授業で学んだはずがすっかり忘れているので、国際政治の教科書を引っ張りだしました。有斐閣の「国際政治」より。)

これだど何を言っているのかよくわかりません。なので、学校の教室を国際社会に例えて考えます(そういう教育系のドラマもあった気がします)。国際社会である3年B組には、1人の先生と198人の生徒がいます。彼らがこの国際社会の構成員です。

この時、この先生というのがいわば覇権国家です。覇権国家とは、国際社会に対して長期的に支配的な影響力を行使する国家を言います。そして198人の生徒は通常の国家です。学校の先生は、資格基準を満たした学生にのみ3年B組の席を与えます。それは例えば「3年生である」や「B組の生徒である」といった基準になります。

実際の国際社会においては、「主権国家である」や「文明国水準を満たす」といったような資格基準が存在します(しました)。つまり、資格基準を満たさねければ国際社会の一員にはなれないということです。

次に、先生は教室内の風紀を乱す生徒や校則を破る生徒には注意をして行動の変化を要求します。逆に先生の決めたルールをしっかり守る優等生は褒めて、より先生のいうことを聞くようにします。この時の「校則」や先生の決めた「クラスルール」にあたるのが行動基準です。

実際の国際社会においては、「国際法の順守」や「武力の不行使」、「核保有国以外の核開発の禁止」等の行動基準が存在します。そして、行動基準を満たさない国には他の生徒や先生から制裁が加えられます。

つまり、国際秩序とは、3年B組において先生と生徒達の間で「クラスルール」や「校則」について同意が成立している状態。言い換えれば、3年B組の先生と生徒がクラスルールをしっかり守って生活している状態ということができます。

ここで、注目すべきは先生=覇権国家の存在です。覇権国家は「誰が3年B組の生徒か」=資格基準や「クラスルール」=行動基準の決定に大きな影響力を持っています。そこで、国際秩序とは、覇権国家を中心とした秩序と言い換えることができます。

(2)覇権国家の交代の歴史
歴史的にみると、覇権国家は絶えず交代を繰り返してきました。

前近代で見ると、まずは16世紀後半スペインが「太陽の沈まぬ国」と呼ばれる大国となりました。しかし、その後スペインからオランダが独立すると、オランダは海上ネットワークを支配し世界の覇権を獲得しました。

17世紀後半、オランダが英蘭戦争に敗北すると、今度はイギリスが海洋の覇権を獲得し、多数の植民地を包含する大英帝国を築きました。しかし、第一次世界大戦が終結すると、経済・国土・人口が疲弊したイギリスなどのヨーロッパ諸国に対して、アメリカが力を伸ばします。

しかし、アメリカは戦間期(第一次世界大戦と第二次世界大戦の間)には国際社会で主導的な役割を果たそうとしませんでした。そして、世界恐慌をきっかけに台頭したファシズムとの間で第二次世界大戦が勃発します。

戦後、今度は戦勝国のアメリカとソ連が、資本主語と社会主義という政治・経済上のイデオロギー的な対立を開始しました。国際社会にアメリカとソ連という二人の先生が登場し、2つのクラスができたイメージです。このいわゆる冷戦とよばれる二極構造はケネス・ウォルツの「二極安定論」に代表されるように、安定的な国際秩序と考えられていました。

しかし、結局ソ連は1991年に崩壊します。ソ連の国際的な立場を引き継いだロシアもソ連ほどの影響力を持つことはできませんでした。一方のアメリカは世界各地に自国の軍事基地を建設し、その軍事・戦前保障上の影響力を行使し続けています。

アメリカは、民主主義体制や自由主義資本主義経済など自国の政治・経済上の体制の他国への導入を進めてきました。覇権国家は交代を繰り返しつつ、そのたびに覇権国家に都合の良い行動基準を設定していったのです。

(3)中国のアメリカの秩序への挑戦
このような現状のアメリカ一強の国際秩序に近年陰りがさし始めています。具体的には中国の急速な経済成長と軍備拡大です。その一方でアメリカは他国から一部の部隊を撤収したり、その同盟国にいままで以上の安全保障上の負担を分担するように求めています。

つまり、中国の経済的・軍事的影響力の増加とアメリカの軍事的プレゼンスの縮小が同時に生じていいると言えます。

中国政府は2049年にはGDPでアメリカに追いつくとの目標を掲げています。それが果たして実際に可能であるかは別として、中国は世界一の経済国になろうとしていることは疑いの余地がありません。

経済力は現代国際社会において極めて重要なファクターです。軍事力と同様に、他国に自国の意図を押し通すための道具として経済的な影響力は非常に強力です。そして、経済力と軍事力は密接に関係しているためん、経済力の増加は必然的に軍事力の増加をもたらします。

この中国のアメリカに対する挑戦ともとれる宣言に対して、アメリカは中国への対外政策を強硬なものへと変更しています。対中関税の引き上げも、今まで中国が享受していた特恵的な低関税を阻止するためのものです。

依然として、アメリカの軍事力は強大ですが、中国もドローンや自立兵器などのアメリカが重点を置いてこなかった軍事分野の技術革新を加速させています。また、一帯一路戦略のように太平洋とは反対側のユーラシア大陸内陸やアラビア海方面への経済進出を強めています。

このようなアメリカを覇権国家とする国際秩序への中国の挑戦は、新たな国際秩序の変革の過渡期なのか、それを現状で判断することは難しいです。ただし、今までの歴史で覇権国家の変更が生じてきたのと同様にアメリカの覇権も永遠ではないでしょう。そして、アメリカを中心とする国際秩序も不変ではないでしょう。


今回は、本当に話したいことの導入で終了となってしまいました。国際秩序とは何かということ、国際秩序が歴史とともに変化してきたこと、そして、現代では中国がアメリカ中心の国際秩序に挑戦していること。こう言ったことが分かってもらえたらと思います。

次回は、こうして国際秩序の変遷に「エントロピー増大の法則」を当てはめてみたいと思います。もし興味があればまた読んでみてください。では、またお会いしましょう!

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